所 在 |
京都府木津川市加茂町西小札場 |
ご協力企業 |
株式会社都市景観設計様 樋口造園株式会社様 |
調査期間 |
H26/06~H26/07 |
発掘面積 |
44㎡ |
特別名勝・史跡浄瑠璃寺庭園について
浄瑠璃寺庭園は、昭和51年度に整備されてから、35年以上の年月の間に変貌した特別名勝・史跡の景観を再生するため、平成22年より5ヶ年計画で保存修理事業が始まりました。そして、その一環として、池を中心とした庭園の景観がこれまでの歴史の中でどのように変化してきたのかを調べるために、発掘調査をおこなってきました。
これまでの調査で、池をめぐる州浜や石組による岸の様相、中島や出島の構築方法などが少しずつ明らかとなっています。今回の調査では、北西出島の下層遺構の確認、西岸における現在の本堂が移築される以前の池護岸範囲の確認、南岸神社跡地周辺の下層遺構の確認を目的として、それぞれ該当する箇所に調査地を設定しました。
発掘調査の内容
時 代 |
発掘した遺構 |
平安時代~中世 |
溝状遺構・護岸遺構 |
近世 |
石列 |
時 代 |
発掘した出土品 |
平安時代~中世 |
土師器・須恵器・瓦器・瓦質土器・瓦ほか |
近世~近代 |
陶磁器・瓦ほか |
発掘調査の成果
今回の調査で、いくつかの発見がありました。
本堂南側では、丘陵傾斜地を大幅に削平して平坦な地形を作り出している事が判明しました。また、池側に向かって地山層の上に盛土造成し平坦面を確保した状況が確認できたが、前年度の調査地で検出したような版築による地業構造ではなかったことから、現本堂を移築するための地業は場所により様々であったと推察できます。
北西出島の調査では、近世の旧園路と考えられる石列を検出しました。さらに、池を盛土造成するための地盤固めと考えられる中世の地業層を確認し、近世に造られた北西出島以前の北西岸の状況を知ることができました。そして、池側の調査では、中世の堆積層が認められたものの州浜ではなく、花崗岩を使用した護岸であることがわかりました。これは花崗岩を海岸に見立てた荒磯風な護岸であった可能性も考えられます。
南岸神社跡地周辺では、排水を受ける溝があったことが確認でき、この溝が鎌倉時代に廃棄されたこともわかりました。同時期には他の調査区でも盛土造成などが確認されており、このことから鎌倉時代に大規模な庭園改変がなされたことが推測できます。
これまでの浄瑠璃寺庭園における発掘調査で、庭園の歴史を知ることができる数々の発見がありました。この発見が、浄瑠璃寺庭園の整備事業だけに留まらず、日本の庭園史研究における有用な資料となれば幸いです。
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本堂前調査地池側全景
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溝状遺構
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発掘作業風景
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巴文軒丸瓦出土状況