京都 遺跡発掘調査 有限会社京都平安文化財 調査のながれ

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整理作業

 現場での発掘調査や測量調査が終わったら、そこで得られた成果を整理する作業が始まります。
 整理作業は、調査時に出土した遺物を図化したり、現場で測量したデータから図面をおこしたりして、調査成果の記録保持と報告書作成などの情報公開を目的とした、重要な作業です。

1.台帳管理

 日誌・遺物台帳・遺構台帳・図面台帳・写真台帳などは、調査の正確性を維持するためにとても大切な記録です。また、この台帳類を丁寧に作成・管理することで、現場での調査も後の整理作業も円滑に進めることができます。
 日誌は日々の調査の実録であり、具体的な調査の手順や進行状況を明記します。遺物台帳・遺構台帳は、出土した遺物・遺構の情報を記録しています。図面台帳・写真台帳は、作成した図面と撮影した写真を管理するための台帳です。

2.遺物の洗浄

 土の中から出てきた遺物は、土や汚れがついた状態なので、きれいに洗浄します。
 遺物の材質や残存状態によって、洗浄には特殊な薬品を用いることもありますが、よく出土する土器や陶器や埴輪、瓦などは水だけで洗います。ブラシや筆を使ってきれいに洗ったら、新聞紙などの上に広げて乾燥させます。
 脆弱な遺物の場合、その状態に応じて洗浄の前や後に、専用の薬品に漬け込むなどして強度を高める保存処理を施します。
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    瓦の洗浄作業

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    瓦の洗浄作業

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    強化剤に漬けた埴輪の乾燥

3.遺物の注記

 遺物は、出土した状況や出土位置・出土日時などを記載した遺物カードとともに保管されていますが、整理作業時にそのカードと遺物が離れ離れになることもよくあります。ですので、遺物とその遺物の情報がバラバラになってしまわないように、各遺物に遺跡名や記号番号を書き込んでしまいます。できるだけ小さな字で、でもはっきりと読めるように書かないといけませんので、手先が器用な人は得意な作業ですね。

4.遺物の接合と復元

 土器や埴輪などの遺物は、出土時にはバラバラの破片になっていることが多いです。でも、近くから出土した破片同士は、同一個体として接合することがよくあります。また、離れた位置から出土した破片でも接合することがあり、その場合になぜ破片がこんなに離れていたのかと考えることも重要な研究になります。面白い例では、違う遺跡で出た石器が接合したというケースもあります。
 このように、遺物の接合関係を検討することも大切な整理作業のひとつですし、単純に近くの破片が接合して大きな個体になると、その遺物の形状がわかって、そこから時期などを推定することにもつながります。
 そして、接合した遺物は、破片が不足している場合、石膏などで不足部分を補って形を復元することもあります。石膏部分にきれいに色を塗って仕上げると、一般の方にもその遺物の本来の状態がわかりやすくなります。
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    埴輪の接合作業

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    土師器の接合作業

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    土師器の接合作業

5.遺物の実測と写真撮影

 報告書に遺物の情報を掲載するとき、実測図と写真が必要になります。
 実測図は、デッサンとは違い法量や形状が正確に伝わるように設計図のような図面を描きます。特殊な実測道具を用いて細部まで計測し、図化します。
 また、瓦や刻印などは、画仙紙を当てて墨をのせる、「拓本(たくほん)」をとる作業をおこなうこともよくあります。
 さらに、写真撮影もおこないます。遺物の写真は室内でライティングして撮影する場合と、屋外の自然光で撮影する場合があります。写真は、実測図や拓本では伝わらない質感などの具体的なイメージを補うことができるので、重要な遺物は必ず報告書に写真も掲載します。
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    埴輪の実測作業

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    埴輪の実測作業

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    瓦の写真撮影(屋外)

6.実測図・測量図の製図

 遺物の実測図は方眼紙に鉛筆描きなのでこのままでは報告書に載せられないですし、現場で写真測量したものも図化しなければなりません。これらは、パソコンソフトを使用してきれいな線を引いていくトレース作業をおこないます。
 また、電子平板で図化したものも現場作業ではできることが限られるので加筆して製図します。細かい体裁を整えたり、複数の図面を合成したり、報告書に使用できる状態に仕上げていきます。
 こうして、調査に関わる図面類ができあがります。
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    製図した遺構測量図

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    製図した遺物実測図

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