京都 遺跡発掘調査 有限会社京都平安文化財 調査のながれ

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過去の発掘遺跡紹介

平安京左京八条二坊九町跡

所  在 京都市下京区油小路通下魚ノ棚下る油小路284他
計画機関 サムティ 株式会社 様
調査期間 H30/6~H30/9
発掘面積 280㎡
現地説明会 2018年9月24日実施 現地説明会資料

平安京左京八条二坊九町について

 今回の調査地は平安京の「左京八条二坊九町」にあたり、平安京遷都に伴って長岡京から移された東市の南東にあたります。この東市は遷都後徐々に範囲が四方に拡大され外町が形成されたため、今回の調査地は東市外町の東側と南側に隣接することになりました。
 当地は東市を中心として経済活動が活発だったようで、周辺の過去の発掘調査でも平安時代前期から多彩な遺物が多く出土しており、繁華だった様子を物語っています。そして、平安時代後期には七条大路と町小路の交点付近が「七条町」と称され、商工業の要所としてさらに繁栄していきます。この頃の『新猿楽記』という書物にはフィクション物語ながら「七条町」の金属加工に関わる金工工人の話が記されていて、八条二坊・三坊の調査では実際に平安時代から鎌倉時代の鋳造に関わる遺物がたくさん出土しています。
 その後、16世紀末に本願寺と興正寺が大坂から京に移転すると、七条北には寺内町が形成され、七条南の当調査地界隈も二条大宮付近の人家を移して「油小路町」を開いたことが『坊目誌』からわかります。町家が並ぶ油小路町は、七条北の本願寺地内町に続く市街地のような場所だったようです。
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発掘調査の内容

時  代 発掘した遺構
平安時代~江戸時代 井戸・暗渠・墓・土坑
時  代 発掘した出土品
平安時代~江戸時代 土師器・須恵器・瓦器・緑釉陶器・輸入陶磁器・
焼締陶器・瓦・鋳造関係遺物・銭貨・八稜鏡

発掘調査の成果

image  今回設定した調査区は東端がほぼ平安京の油小路と九町の境と想定され、南北は北1/4程が九町を細分した区画の「西四行北六門」、南3/4が「西四行北七門」の位置にあたります。
 発掘調査の結果、平安時代から江戸時代の各時代の遺構が調査区のほぼ全面から検出されました。各時期とも井戸が目立ち、柱穴や土坑墓もありましたが、当地の土地利用の様相を特徴的に示すような遺構は少なかったです。しかし、出土遺物については、とても特徴的で興味深い発見がありました。
 今回の調査の出土遺物で注目すべきものは、鋳型や坩堝(ルツボ)などの鋳造関係の遺物です。主に遺構に伴うものではなく包含層からの出土で、鋳造に関するような焼土もほぼ認められないことから、調査区内で鋳造作業が行われていたわけではないと考えますが、近辺に鋳造工場があった可能性が高まります。
 出土した鋳造関係の遺物は、鋳型、坩堝(ルツボ)、鞴(フイゴ)羽口、取瓶(トリベ)です。製品が判別できる鋳型は刀装具と鏡のものがありました。鋳型の破片だけでは年代の特定は困難でしたが、同じ鋳造関係の道具である取瓶(トリベ)に使われた土師器が14世紀末のものであるため、鋳造関係の出土品の多くは室町時代初めころのものではないかと考えられます。しかし、鏡の鋳型1点のみ胎土等の様子が違い、真土との接合をよくするための斜格子の刻みが鋳型の両面にあるため、これは数枚の鋳型を合わせて量産する江戸時代の鏡の鋳型ではないかと推測できます。刀装具や鏡は単なる日用品ではなく、「付加価値の高い品」で、当地ではこういった品を製造していたと考えられます。
 さらに、注目すべき遺物に銅製八稜鏡があります。鏡面径約11㎝で内区に瑞花双鳳の文様を施したもので、包含層からの出土のため埋没年代は判然としませんが、製作年代は10世紀代と考えられます。出土時に覆っていた錆を取り除けば金属光沢も見える、状態の良好な鏡ですが、外区から内区に及んで1稜半分を大きく欠損していて、欠損部付近の鏡面側には工具による線刻が認められることから、欠損部は意図的に折り取られた可能性があります。この八稜鏡は製作年代的にこの地での生産品ではなく、「東市」「七条町」の隣接地として物資の集積・流通に関わったもの、あるいは付近に居住していた富裕層の持ち物であったと考えることもできます。しかし、もしも意図的に欠損したものであるならば、不要になった金属製品を鋳つぶして新たに金属製品を作るための原料にするといった鋳造関係の遺物である可能性もあるといえます。
 このように、今回の調査では明確な鋳造遺構は検出できなかったものの、鋳造関係の出土遺物に富み、また砥石などの未製品も出土していることなどから、文献等にみられる当地の工房利用の可能性を強く示唆できた点で、とても発見の多い調査となりました。
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    刀装具の鋳型
    (室町時代)

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    鏡の鋳型
    (室町時代・江戸時代)

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発掘調査成果報告書

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