京都 遺跡発掘調査 有限会社京都平安文化財 調査のながれ

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過去の発掘遺跡紹介

平安京左京四条三坊二町跡

所  在 京都市中京区新町通六角下ル六角町369他
計画機関 IPHF5 新町通合同会社 様
調査期間 H29/3~H29/5
発掘面積 148㎡
現地説明会 2017年5月13日実施 近隣住民現地説明会資料

調査地と平安京左京四条三坊二町について

 平安京左京は、北山・東山から流れ出る鴨川などの中小河川が造り出した扇状地に立地しています。この扇状地上層部には、いわゆる「聚楽土」と呼ばれる黄土が広がり、五条大路より上がると地形が少し高くなるためか、居住地としての土地利用が盛んで、平安京の成立以降は天皇家や藤原北家一門などの高級貴族らが一町から四町規模の大邸宅を営む土地となっていました。特に丸太町通以北は、中近世には御所を中心に公家町となり、そこに新興の富裕の町衆も集住して「上京」を形成して栄えていったと考えられます。 
 今回発掘調査をおこなった左京四条三坊二町という地も、四条以北の新町沿いは平安時代に高級住宅地の一角を占めており、平安時代後期頃から六角町(ろっかくまち)や三条町(さんじょうまち)などの新興市や商工業者の集住により、急速に都市化が進みました。「下の京(しものまち)」の一部として、京の町の発展に大きく関わってきた地域といえます。六角町の南辺に位置する当調査地ですが、六角町は鎌倉時代に魚屋が数軒営まれていたことが文献から知られており、続く室町時代にも六角町の市場は魚屋の多さで有名だったようです。また、織田信長と所縁の深い本能寺や南蛮寺が調査地の1町隣に建立されていたと考えられ、中世後半もこの地が経済活動の中心地のひとつであったことが推測できます。
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発掘調査の内容

時  代 発掘した主な遺構
奈良時代以前 竪穴住居址?
平安時代~桃山時代 土坑、井戸、地下室(ちかむろ)
江戸時代 井戸、土坑、掘込み
時  代 発掘した主な出土品
奈良時代以前 土師器、須恵器、黒色土器、緑釉陶器
平安時代~桃山時代 土師器、須恵器、焼き締め陶器、輸入陶磁器、
瓦、大甕、銅鏡、銭貨、火縄銃部品、動物遺存体
江戸時代 土師器、国産施釉陶器、輸入陶磁器、動物遺存体

発掘調査の成果

 今回発掘調査を実施した範囲では、11世紀後半から12世紀前半としている遺構面で、柱穴を含むピットや中小の土坑などがたくさん展開する様子がみられ、その頃から、後世に続く本格的な土地利用が開始したものとみられます。
 そのさらに上層(新しい時代)では、鎌倉時代のものが中心となり、地下倉庫的な役割を担った「地下室(ちかむろ)」などの大型遺構を中心に、密に遺構が展開する様子が鮮明にわかります。応仁の乱前後の15世紀後半頃に少し遺物や遺構の空白が見られますが、その後の室町末期から近世江戸時代以降へと、さらに発展した土地利用の様子が、出土遺構の多さや質量豊かな輸入陶磁器類を含む大量の出土遺物からうかがえます。
image  主な検出遺構としては、中世の土坑と地下室(ちかむろ)があげられます。
 地下室はほんの一部のみの検出に留まったものも含めて合計4基を検出しています。4基の中で古く見ている地下室3と地下室4は、地下室3が12世紀末、地下室4が13世期後半頃に成立した可能性が高く、いずれも規模は不明ですが、おそらく南北方向に長辺を置いていたものと考えています。地下室2は14世紀の早い段階で成立し、中葉には埋没したものと見られ、その埋没後の14世紀のうちに地下室1が建てられたと考えられます。地下室1は長辺約5.8m×短辺約2.4mを測り、地下室2は長辺約5.4m(短辺は全長不明、検出1.1m)で、両地下室とも東西方向に長辺を置いています。
 4基の地下室はいずれも平坦な底面を持ち、堆積岩主体の自然石を、平坦な面を上にして丁寧に敷かれていました。石の配置は地下室毎に少し異なりますが、石の上に壁板や底板を設置していたと考えられます。用途としては、温度を一定に保てる地下式の貯蔵施設であったと見ており、中近世の商工業町屋が建ち並んだ当該地域の様相をある意味で裏付ける、象徴的な遺構であると言えます。
 また、地下室1は、その貯蔵庫的な本来の役割を終えた後、灰・炭・焼けた土壁を含む焼土の塊を主として、焼けた土器・陶磁器、魚動物の骨片、銭貨等の大量の廃棄物を含んだ堆積土で埋設されていました。堆積土の包含物は、火事の処理品と考えられるものもありますが、おそらく多くは日常活動で生じた塵芥、つまりゴミの類と考えられます。しかし、その量や質に注目すると、単純な生活廃棄物ではなく、商工業による経済生産活動の廃棄物、つまり産業廃棄物に類するものと考えた方がよさそうです。
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    出土陶磁器

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    地下室2出土 瓦器小壷・花瓶
    (14世紀)

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    土坑50上層 埋甕2
    (14世紀前葉/東播磨産か)

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    出土動物遺存体

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    出土動物遺存体

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    土坑50上層埋甕2の傍らから出土 和鏡
    (11世紀)

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    出土銭貨
    (13世紀後半~17世紀前半)

発掘調査成果報告書

2022 『平安京左京四条三坊二町跡』京都平安文化財発掘調査報告第11集

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