京都 遺跡発掘調査 有限会社京都平安文化財 調査のながれ

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過去の発掘遺跡紹介

伏見城跡・桃陵遺跡(京町1丁目)

所  在 京都府京都市伏見区京町1丁目245
計画機関 株式会社ラプラス・システム 様
調査期間 H27/11~H27/12
発掘面積 138㎡
現地説明会 2015年12月5日実施 現地説明会資料

伏見城跡・桃陵遺跡について

 当調査地は日本史の中で幾度となく表舞台に現れ、歴史的に重要な地として以下のように知られています。

・桃陵遺跡…弥生時代の集落で、過去の調査では方形周溝墓7基確認されています。

・伏見城跡…伏見城は1592年豊臣秀吉が指月山に築城。その後1596年慶長の大地震で倒壊したとされ、1597年秀吉は指月山北側の木幡山全体に大規模な城郭を築城。1600年関ヶ原の戦いで焼亡。その後、徳川家康が再建。京都の拠点二条城造営により、政治的意図が薄れ、徳川家光により廃城となる。
 木幡山は現在、大部分が明治天皇陵など宮内庁所管のため一般は立入禁止ですが、近年の研究団体の調査で石垣等江戸初期に徳川家光に壊された状態で残っている可能性が確認されています。
 当調査地は伏見城期の城下町にあたり、南北の京町通と東西の立石通が交わる南東角に位置します。

 この他に弊社が関わった伏見城跡・桃陵遺跡の発掘調査 → 伏見城跡・桃陵遺跡 伏見城跡・桃陵遺跡2013
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発掘調査の内容

時  代 発掘した遺構
桃山時代~江戸時代初期 礎石列・落ち込み遺構
江戸時代 石列・土坑
時  代 発掘した出土品
古墳時代~平安時代 土師器・須恵器・瓦
桃山時代~江戸時代初期 金箔瓦
江戸時代 陶磁器・土器・土製品・瓦

発掘調査の成果

image  今回の発掘調査の結果、まず調査地の旧地形について知ることができました。調査地から東方向の丘陵上に伏見城が築かれていたため、城下はその丘陵斜面地に広がり、調査地も東から西へと下る斜面となっていることが当初から想定されいましたが、今回の調査により北から南への下がりも確認できました。南下がりの原地形の南側をさらにを削平し北側に土を盛って檀上の造成をおこなっています。これはおそらく伏見城建設初期段階に施されたものです。
 また、今回の調査地南で過去に行われた試掘調査では幅2mの南北方向の溝が検出されておりその溝は京町通の東側溝と推定されました。今回の調査でもその側溝の延長部分の確認が期待されたものの想定する場所は落ち込み遺構となっており(右写真:手前右側調査区壁沿いの遺構)明確な溝の確認はできませんでした。しかし、この落ち込み遺構には東からの水を誘導するような暗渠状施設がつくられており、この落ち込みが京町通東側溝の北端である可能性が考えられます。側溝と落ち込み遺構の位置から当時の京町通が今の2.5倍の幅を持った大通りであったことがわかり、さらに側溝が一旦途切れる理由として東西に走る立石通も主要道路というべき大通りであったのではないかと考えることができます。
 この溝は整地の様子から江戸時代初期頃までに埋まり京町通もその時期に現状に近い規模に狭められたと思われます。
 そして、側溝が埋没した後に狭くなった京町通に間口を開いていたと考えられる建物跡を確認しています。最も下層の建物跡は礎石列からうかがうことができ、東西方向に1列に並んだ4基の礎石と1基の礎石抜け跡が検出されています。その礎石列の上には建物の縁石と考えられる石列が確認でき、この地にはまず礎石列による建物があったこととその後に同じ位置に縁石列の家屋を立て直したことがわかります。縁石の状況から、建物はここを北辺として建てられていたようです。
 礎石列の建物はおそらく側溝埋没後間もなく、江戸時代初期の段階で建てられたものと考えられ、縁石列が伴う建物は遡っても江戸時代後期以降の遺構となると思います。また、縁石の一部には裏込めに煉瓦片が混入していることから、近代における改装の痕跡がうかがえ、この地の町家文化が近現代へと続く様も垣間見ることができました。
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    礎石列(江戸時代初期)

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    縁石と考えられる石列(江戸時代後期~)

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    金箔瓦(伏見城期)

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    陶磁器

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    つぼつぼ・土鈴

 今回の調査では弥生時代から桃山時代の遺物が少量確認できましたが、いずれも遺構に伴うものではありませんでした。桃山時代の遺物としては金箔の残りの良い金箔瓦の破片が出土しています。江戸時代の遺物で多いものは瓦類でしたがそれらがどこにどのように使用されたものか特定には至りませんでした。陶磁器類は伊万里染付や広東碗、唐津の碗などが出土しており、伏見稲荷大社の縁起物の「つぼつぼ」や土鈴もみられます。

発掘調査成果報告書

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